2012年04月27日

薬物依存者の自宅訪問

帰る間際になってから色々なことに気づいてくるものですが
障がい者支援のための派遣であっても
社会福祉事務所のいろいろな部門の仕事にもっと関わらせもらえればよかったなぁ
と思うようになった今日この頃。

もちろん派遣の目的通り、障がい者支援を中心にやっていけばよいのですが、
しかし、マレーシア社会のあり様をよく知り
その中で実践されている福祉のあり方を知るためには
事務所で行われること様々なことに、もう少し目を向けてくればよかったと思います。
他分野のことであっても、
「マレーシア社会におけるソーシャルワークではどういう姿勢と認識で支援が行われているか。」
ということを学ぶことができ、
そのことは広い意味で自分の活動の土台にもなります。

遅きに失していますが、まぁそれでも日本に帰った時に他分野の福祉の状況を聞かれた時に
ある程度の状況を伝えられるというメリットもあるので
帰るまでの間、本業の合間を縫って
高齢者や青少年、薬物依存の人たちへの支援などに
最近は同行させてもらう機会をつくるようにしています。

そして本日は
Agensi Anti Dadah Kebangsaan
(National Agency of Anti Drugかな、英訳すると。。日本語だと反薬物協会??)と
社会福祉事務所の共同で行われる薬物依存者宅への訪問活動に同行させてもらいました。

薬物依存というとヘビーかつセンシティブな問題なので
同行しても良いのかな・・・?と思っていましたが、
そのへんもオープンというか、OKとのことで
逆に言うとプライバシーの保護という観点も少々緩い。

アルコール天国の日本とは違い、イスラム教国家のこの地では
アルコール依存症の話はそれほど多くは聞きませんが
一方で、薬物汚染の魔の手は私の任地のような小さな町にも広がっているようです。

薬物所持のため逮捕された人たちは、裁判所命令により
2-3年の間、上記の反薬物協会の提供するグループに定期的に参加し
また自宅訪問も行われる、とのこと。

本日は5ケースの家をまわり、生活状況を確認する作業が行われていました。

薬物に手を出す構成員のいる家庭では
他の問題も散見されるため
社会福祉事務所からの支援の必要性のあるケースも多いとのことで
そういった背景をもとに、今回の訪問は社会福祉事務所との共同で行われたようです。

今日のケースの中にも、いかにもすぐに壊れ落ちてしまいそうな家に住む
7人の子どもがいる家庭がありました。薬物依存者は父親。
就学年齢にある子どもたちも学校に行かずに家にいる。
「字を読んだり書いたり出来ない。」という母親は、社会福祉事務所で提供される
扶助についても知らなかったため、福祉を受けたことはなかったとのこと。
「福祉事務所に私を訪ねて来て下さい。援助することができますから。」
と職員が伝えて帰ってきました。

image008.jpg
(立っているのは職員)


こういうふうに福祉の色々な側面を見ると
マレーシアでもソーシャルワークは実践されており、
また今後もマレーシア社会に適合した方法論で確立されていくのだろう
という気がします。

残り少ない限られた時間の中ですが、
マレーシアの社会福祉の現状に関する見聞を少しだけ深めていきたいと思います。
posted by おさる at 00:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 協力隊員活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月26日

コミュニティーというもの

先日、事務所の高齢者部門のスタッフが
「老人ホームのGotong-Royongに行く。」ということであったので
興味があって、一緒に連れて行ってもらいました。

Gotong-Royongというのは日本語に直接なおすのが難しいマレー語で、辞書では
相互扶助
と載っていますが、たいていは皆で助け合っての大掃除をさす場合が多いです。

というわけで老人ホームの大掃除に行ってきました。

家族のつながりが徐々に薄くなりつつあるというマレーシアですが
高齢者への援助は家族が行う、という認識はまだまだ濃く
そのため日本のように社会制度としての老人ホームや高齢者サービスというのは
確立していないようです。
身寄りのない高齢者の入ることのできる政府所有の大規模施設は全国では2か所だけ。
そして、それ以外は地域の人々やNGOが所有する小規模なものであるとのことです。

今回行った老人ホームも地域の人々の所有である、との説明を受けましたが
一方で入居の受付は社会福祉事務所で行われていたり、
職員による見回りが行われていたりするということを知りました。

雰囲気は日本でいうところの、グループホームに近い感じで
木製の小さな部屋ですが、一応個室があるようです。全部で20部屋あり、現在の入居者は15名。
食事は食堂のようなところで、入居者皆で調理人が作ったものを食べるようです。
しかしながら、この老人ホームの世話をするのはこの調理人のみで
介助人などがいるわけではないらしく、基本的に身の回りのことは入居者自身で
行われているとのこと。

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老人施設特有のまったりした時間が流れていました。


さて、大掃除の方ですが、今回は健康局の職員が中心となっての実施で
そこにこの老人ホームのある地域の人たちが集まって協力していました。

地域の人たちは「この老人ホームの運営にはコミュニティーが協力していやっているんだ。」
と誇らしげに話をしていました。
こういう場面をみると、日本とマレーシアでは本当に社会のありようが
違うんだなぁ、ということを実感させられます。

日本ではもちろん地域福祉の重要さもさかんにうたわれますが
しかしながら、やはり福祉に対する大きな責任は、公的な機関にうつっているように思います。
一方で、マレーシアでの社会認識では
身寄りのない高齢者や障がい者など社会的弱者と呼ばれる人たちを助けるのは、
家族とそしてコミュニティー。
政府はそれを後押しする立場。
これがやはりマレーシア社会なんだな、と改めて思います。

以前はこういう社会認識に戸惑ったり、どうして
公的な援助が行き届かないのか
と不可思議に思ったりしていましたが、
最近では、社会認識のありようを見て
それに適した福祉のあり方を考えることが大切なんだろうと思うようになってきました。

コミュニティーによる互助がまだまだ機能しているマレーシア。
公的な支援もその互助をどう活かすか、と方向に考える必要があるのだろうと思います。

それにしても、皆コミュニティーへの貢献ということを結構一生懸命やっています。
日本のように毎日が残業という仕事環境ではない、ということも
それを可能にする一因かもしれません。
地域における役割をそれぞれもっている人々の姿を見ると
地域・コミュニティーという宙に浮いてしまいやすい言葉も
それが実のところ一体どんなものなのか、
実感をもって知ることが出来るなぁ、と感じました。
posted by おさる at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 協力隊員活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月01日

閉鎖性のある場所


私の活動範囲は狭いので、一般化はすること危険ですが
少し田舎の方へ行くほど、障がい者の社会参加への認識は低まるのかもしれない。

というようなことは、別に特筆するべきことでもなく
誤解を恐れずに言えば田舎は概して閉鎖的であり、あの人もこの人もその人も、
その人の子どもも孫も嫁さんも
皆が皆を知っています、という社会。
私自身が村(という行政区分では私が産まれたときにはすでになかったけれど、あれは
まさに村以外の何物でもなかった。)出身なので、実感をもって言えるのですが、
田舎や村社会は、とても牧歌的な良い側面がある一方で、排他的な不信が
残念ながら救いがたくあります。

そういうある種の閉鎖性・排他性を、ここマレーシアのFeldaという地区で感じることがありました。

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Felda(Federal Land Development Authority)という組織は
日本語に直すと、「連邦土地開発庁」
というものになります。
歴史的には
ジャングルを伐採し、農園を併設した入植地を開発してマレー人土地なし農民を
移住させ、農園・新村落を管理してきた機関のようです。
そしてこの機関が開拓していった場所もまたFelda地区と呼ばれて一つの村落を形作ります。

しかし、このFelda地区はなんとも不思議な地区で入ってみるとその感覚がわかるのですが
小都市部から移動し、どんどんとジャングルの中をはいって行ったところに
突如としてその地区が出現するのです。

普通、町でも村でも他の場所とのつながりというか、連続性が感じられ、
「ああ、ある町にはいってきたのだな。」という徐々に移動してきたという実感を得られるものですが、
このFelda地区というのは、なんというかいきなり、その存在を現わすのです。
これはなんとも言葉では説明しにくいのですが、ジャングルのど真ん中に小村落がつくられている
という、不思議さ・妙さがあるものなのです。

Felda地区の入り口にはゲートがあります。これがまず、外から来た人間に異様さを与えます。
地区に入って一周するとわかるのですが、この地区にはすべてがあります。
住居地区があり
学校があり
病院があり
モスクがあり
店や食べ物やがあり
その他公共施設や必要なものがすべてある。

また、現在は油ヤシやゴムなどの商品作物の栽培が中心に行われているようで
商品生成のための工場も併設されている。

つまり、ジャングルの中に突如として出現する、ゲートで囲われたこの地区は
そこだけで一つの社会をなしており、言いかえればそこでなんでも用が事足りてしまう。

ある意味で便利なのかもしれないけれど、どうもなんとなく閉鎖性も感じられる。

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さて、Feldaの中にはPDKがあるところもあります。
現在私がまわっているPDKではFelda直轄PDKが2か所あり、
そのうちの一つのPDKの訓練生に就労支援をすることになりました。

この訓練生の両親は、「自分の息子が町に一人で出ることは許さない。」
という確固とした考えをもっていました。

一方、PDKワーカーの一人はその訓練生に就労の機会を与えたいと考えており
訓練生自身も何かして働きに出てみることを楽しみにしているようでした。

そこで、このFelda地区内で受け入れてくれるところはないか、
ということで、2日かけてPDKワーカー・その訓練生と一緒に探してみたところ
小さな小さな食べ物屋で受け入れてくれる、ということになりました。

とりあえず1か月ということで。

そして、どんな仕事が彼に適当か、私はいつものようにまずは最初に自分で半日見に行きました。
そうすると、食べ物屋の女主人。
「私は協力したいと思っています。ただね、やっぱり客が皆嫌がるの。
障がい者は食べ物屋での仕事なんかには向かないと言って。うるさくしたりするでしょう。
それに自分で自身の清潔保持をすることもできないでしょう。そんなとこまで私は
面倒をみることは難しい。」
女主人は私たちの依頼をまじめに考えてくれていました。
そして客も別にふざけてそんなことを言っているわけではない。
ただ、真剣にそう言っているのです。

その食べ物屋に来る客は皆、私の姿を見て言いました。「あの子誰?」
女主人は説明してくれました。
「日本からのボランティアで障がい者の仕事探ししたりしている。
ここにも、一人来週から訓練で来るの。」

そうすると、先に女主人が私に言ったように、客は眉をひそめて言いました。
「こんなところに障がい者が働きにくるなんて、ふさわしくないな。」

さらに話は個人の話になっていきます。
「その来週からくる障がい者は誰なんだ。」
「○○さんちの子よ。」
「○○なら自分のところでも店持っているじゃないか。」
「いや、だいぶ前から店は閉めていて、当面の間ここで訓練しようということなのよ。」

私はなんだか、申し訳ないような気になってきてしまいました。
私たちが良かれと思ってしている就労支援のせいで
その訓練生と親はこの閉鎖的と言える地区で妙な噂になってしまっている。

私は半日、その店で後片付け等しながら見学していましたが、
来る客来る客に細かな説明まではできませんでした。

「私は彼ができる仕事を見つけるために今日ここにいるのです。」
「一概に障がい者が食べ物屋で働くことができないわけではありません。」

そういうことを言って受け入れてもらえる段階ではなさそうであるし、
私の語学力で変に伝わり誤解を生む方が危険であると思ったし、
まずは仲良くならないといけないし。

とりあえず私は、「社会福祉事務所でボランティアをしている。だから地域のことを
知りたいと思ってお願いしてここに来させてもらいました。」と繰り返しました。

それだったら受けれ入れてもらえる。
でも「障がい者がここで働くのだ。」ということは今のところ受けれいてもらえそうにない。

日本からのお客さんがしばらくいるだけなら歓迎だけど、
障がい者が自分たちの利用する場所で働くようになる、というような恒常的な変化は困る。

要するにそういうことなのだろうか・・・。

どうなるのかなぁ、と思いながらしかし、
「まぁ、でもいったん受け入れるといったので、やってみましょう。」
という女主人の言葉を頼りに来週からやってみることにはなっています。

それにしても本当に、
変化を拒み、外からの新しいことを受けれることが難しい地域に、私などがのこのこと入っていっても
まさに無力だな・・・、と感じます。
この訓練生が1カ月間、この食べ物屋で働くことができたら、少しは変化になるのだろうか・・・。


ちなみに下の写真はあるFeldaのパームオイル工場の前
image026.jpg

posted by おさる at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 協力隊員活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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